旧「オヤジのフレンチ」

徒然なるままに―カスレのこと

仔羊すね肉とメルゲーズのカスレ

寒いですねえ。

こう寒いとやっぱりカスレが食べたくなりませんか?

で思い出したことが。

かつて組織の中で働いていたころ、「塩豚とソーセージのカスレ」を作ったんですね。

そしたら「カスレはガチョウでなければならぬ」と強硬に主張する人がおりまして、わたくしは大いに困惑しました。

けど反論はしませんでした。だって役職の高い人でしたからね。調理場では上の人が白といえば黒いものも白なのだ!っていう時代でしたから。

カスレといえばラングドック名物。さらにトゥールーズ、カルカッソンヌ、カステルノダリのそれぞれが「おらがカスレが本家本元」と主張しあっているんですが、そのいずれにも鴨(アヒル)か鵞鳥のコンフィが入ります。
だからそういうものだって思いこんでしまったんでしょうけどね。

そもそもカスレはこうでなければならぬっていうほど強い縛りがあるものではない。何が入ったっていい。と私は思ってます。

自分が接したただ一つの情報を調べもせずに信じ込む人は昔はたくさんいました。今はどうかな。

そのルーツはアラブ世界とその影響を受けた北アフリカで食されていた「白い豆と羊の煮込み」であるという説は信じてよいでしょう。
これが南仏に伝わって、大量に飼育されていた鴨(アヒル)や鵞鳥を使うようになったのは至極当然のことです。

フレンチの料理人がバイブルと崇めている「料理の手引き」(エスコフィエ)に収録されているカスレも羊ですしね。

それすら読んでないのかよ。という一撃必殺の猛毒を吐かなかったのは、組織人としてというより人として超えてはならない最後の一線だから。

ま、私がカスレには何を入れてもいい、と主張するのはそんな強烈な体験の反動もあるのだろうな、と自己分析してますがね。

だからサラマンジェのカスレは羊なのです。

骨付きのすね肉を使うことでとってもおいしいだしが出ます。カスレは表面に膜ができるのがよいとされておりまして、そのために必須なのが豚皮でありますが、これをノワール ド ビゴールの生ハムの皮を使うというチョー贅沢仕様でございます。さらにメルゲーズ(コリアンダー風味のちょっと辛い羊肉ソーセージ)の出来も非常によろしい。
ボリュームもあるし、商売のことを抜きにして語れば、寒い日の夜の食事はこれだけで十分ですわ。
けどお客様はちゃんと前菜から注文してくださいね(笑) 出来上がるまでに結構時間もかかりますから。

以上、近況報告でした。

chef
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