これ、クネルです。
リヨン地方の郷土料理で、カワカマスという日本にはいない魚を使います。
すり身にバター、生クリーム、パナードという小麦粉で作ったつなぎ材料を混ぜ込んだ練り物です。これを、バターをかけながらオーヴンで膨らむまで焼いて、ソースナンチュアというザリガニで作ったソースで食す。というものです。はんぺんみたいな食感。ヌーヴェルキュイジーヌの台頭以来、テリーヌでもムッスでもパナードを入れることはなくなってしまいましたが、このクネルとムッス(あるいはムッスリーヌ)はまったく別の料理です。若いコックさんたちはその辺を混同してる。パナードと大量のバターが入ることで、魚とクリームだけで作るムッスにはない深みのある味が出ます。見た目は地味ですが、なかなか美味しいもんですよ。
フランスの三ツ星シェフ、アラン・サンドランス氏が昨年パリに「オ・リヨネ Au lyonnais」というビストロを出店しましたが、そこのクネルより美味しいと言っていただいたお客さんもいました。やってて良かったと思える瞬間です。
若い人たちには創作料理ばかりじゃなくて、こういう地方の伝統的な料理もぜひ覚えてもらいたいものです。
NPO法人日本エスコフィエ協会から、故村上信夫元帝国ホテル名誉総料理長監修「エスコフィエの技 現代の術」の販売協力依頼が来ております。フランス料理の基本技術書です。現代的な技法と古典的な技法がそれぞれイラスト入りで分かりやすく解説されてます。若い皆さんはぜひ買ってください。一般書店では売ってないので直接エスコフィエ協会に申し込むか、または会員(たとえば私)を通せば送料が無料になります。
実はこの本に載っている写真の料理は私が作成しました。だからどうという話ではありません。どんなに売れても私には印税は入りません。(T_T)
7/22追補 パリのオ・リヨネ Au lyonnaisはアラン・サンドランスではなくてアラン・デュカスのまちがいでした。