映画「ファイティングシェフ」の試写会に行ってきました。
フランス料理界のオリンピックともいわれ、2年に一度、美食の都リヨンで開かれるフランス料理国際コンクール「ボキューズ・ドール」に挑むスペイン人シェフの奮闘を追ったドキュメンタリー。
前回大会(2007年)が舞台なので やや旧聞に属しますが、日本からは長谷川幸太郎選手(サンス・エ・サヴール)が出場し、見事6位入賞&「アイデンティティー賞」を獲得しております。
その模様は以前NHKでも放送されましたから、ご覧になった方もおられることと思います。
長谷川シェフ、今回の映画にも出演しています。見事なフランス語でインタヴューに答えています。単語は少ないけどね。スピードがいい。cuisinierってカンジです。
私事ですが、サラマンジェが掲載された出版物は全部母親に送っているんです。誌名を教えても自分で買いに行けないくらい年寄りなので。
そうするとね、親は喜びますよ。
そういう意味では、この年になってやっと親孝行ができるようになりましたよ。
長谷川シェフのお母さんはもうすでに他界されているそうです。
見せてあげたかったなぁ、と余計な御世話ながら思った次第でございます。
横道にそれました。
コンクールという特殊な設定ではありますが、料理人の仕事にスポットを当てた映画としては秀逸でございます。
ヘンな演出もなくて「料理人」という人種の生態をありのままに描いています。
「料理」に対する真摯な姿勢、完璧を追求する向上心、努力することを厭わない情熱、この映画は料理人に必要なそれらの資質を明示してくれてます。
若い人たちには特に見ていただきたいです。
さて、上の写真を見ていただけるとわかるとおり、長谷川シェフの料理は多分に「日本風」を意識したものでありました。
漆器を想わせる食器を使うこと、日本の食材を多用すること、、それが奏功して「アイデンティティー賞」を獲得したわけですが、一部の審査員からは低い評価しか得られなかったと聞いております。「これはフランス料理ではない」と。
しかし、これはこのコンクールが求める評価基準に沿ったもので、長谷川シェフの志向するものと必ずしも同じではないことは理解しなければなりません。
むしろ、顧客やパトロンから「求められていること」を正しく理解し、それに応えられることこそが「プロ」の料理人の仕事の本質なのですから、コンクールの意図を理解していないような発言をする審査員こそ責められるべきです。
映画の中でも、スペインチームのシェフに対する助言として「フランス料理を持っていったら勝てない。スペイン料理でなければ…」という発言がありました。
考えさせられます。
では「フランス料理」とは何なのか?
これは私たちの業界では常に議論されてきたことではあります。
そもそもフランス料理は常に他国の食文化を取り入れながら発展してきたものです。
特に昨今のヌーヴェル・キュイジーヌと呼ばれる現代フランス料理は日本料理の影響を強く受けているというのは周知のことです。
ムニュ・デギュスタシオンと呼ばれる多皿構成のコース、食材の多様化、手間暇のかかるソースは“ジュ”(*)やエッセンスに取って替わられ、もはやフランス料理の「アイデンティティー」は日本料理のそれと区別がつかない。
フランス人シェフの目から見た日本料理の“だし”は、究極のクール・ブイヨン(*)、“エッセンス”なのです。
異論はありましょうが、例えば日本料理屋でフォワ・グラが出てくることに驚く人はもういないでしょう。
同じようにフランスでも異国情緒を演出するために日本の食材を使うことは全然珍しくないことです。
かつて、吉野建シェフは、ステラ・マリス(パリ)の料理を「フランコ・ジャポネ」(フランス風日本料理)と評されたり、ロビュションの料理番組に出演する際、マグロを使うことを要求されたことを憤慨しておりましたが、クラシックを志向する氏の思いとは裏腹に、フランス人が外国人の料理人に期待したのは“エキゾチック”であることでした。
しかし。
フランス人シェフがフランスで醤油を使うことと、日本で日本人相手にフランス料理を作る我々が醤油を使うことはそもそも出発点が違う。
安易に“ジャパナイズ”に走るのは厳に戒めなければなりません。
「ボキューズ・ドール」では各国の特色を生かした料理を要求されましたが、それは単にコンクールの課題であります。フランスで認められたからといって、それをそのまま現代フランス料理の潮流だなどと誤解する料理人が出ないことを祈るばかりです。
他には「エスコフィエ料理コンクール」のようなクラシックを要求するものもあります。
私は2度挑戦して2回とも一次で落ちました。
ホテルが圧倒的に有利といわれるコンクールに、「街場」から出て結果を出した長谷川シェフには敬服するばかりです。
映画評を書こうと思ったんですがどうも私には無理なようで大きく脱線しました。
それにしても、「ファイティングシェフ」ってタイトルはどうよ。
中身がマジな作りだけに、なんかチープな映画に思われかねないことを私は危惧します。
キャッチーだとも思えないんですがねぇ…。
*Jus ジュースのこと。果実に限らず、肉、魚、その他すべての食材から得られる旨味のある液体。
*Court-bouillon 野菜等を短時間煮出して得られるだし。おもに魚料理に用いる。
《Court クール》は「冷たい」ではなく、「(この場合時間が)短い」の意。
フランス語がお得意なのですね。
「d’H…]とエリズィオンさせるあたりただものではないオーラが…。
けど、一応人名だし、しかも日本人なので有音扱いにしといてくださいな。
はじめまして。
貴店は、しばらく前から気になっており、先日、2週間ほど先の予約を入れようとお電話しましたら、13日から9日間お休みとの事で、かわされてしまいました。
酒飲みの私には「がっつり」「内臓系」のリヨン風居酒屋さんというイメージで、ポイント高そうです。
また次の機会にトライさせて戴きますね。
ところで、教えて戴きたいのですが、elisionは人名の前では起きない筈だから、「de H」が正解なのでしょう?
フランス語の得意な友人に聞いたたのですが、例えば某Manoir d'Inn…などという店名はおかしいですよね?
だいたい、マノワールって、(貴族の?)お屋敷という意味だろうから、つけるとしたら例えばManoir du comte (とかDucとか)XXX だそうです。
だから、この場合はManoir de Monsieur Inn…になるはずだし、そもそもご自分のお店にこういう語句を使うのは間違いでは?と思ってしまいます。
ついでに、Chezの後には名前が来るもので、名字が来る場合は、Chez les WakisakaとかChez Monsieur Wakisakaになるべきで、だから、Chez Inn…はChez Nobor…にするべきだろうし、Chez Matsu…なんというのもおかしいと聞きました。
その辺のところ、どうなんでしょう?
なーんて、細かい突っ込みを入れながら、マリア・カラスは食べてみたいですが。(^^;;(^^;;
ゴメンナサイ。
私が言いたかったのは、「外国人名だし、しかも〈H〉を発音する日本人の名だから有音である」と自分で勝手に決めたにすぎません。
自分の名前の〈H〉が有音か無音かをフランス人に決められるスジアイもないし。
>「elisionは人名の前では起きない筈」
かどうかについて、私は人様にお教えできるほどフランス語に精通してるわけではございませんので、「分かりません」としかお答えできません。(普通にあるような気がしますが…)
こちらこそ、申し訳ありませんでした。
何か細かいところを追求したみたいな形になっちゃったみたいで…。
お気を悪くなさいました?m(__)m
そうじゃなく、私自身が数十年前に学校で学んだおぼろげな知識を確認したかっただけなのです。
そう言いながら、最後にもうひとつだけ、どうでもいい突っ込みを。(^_^;)
>私が言いたかったのは、「外国人名だし、しかも〈H〉を発音する
>日本人の名だから有音である」と自分で勝手に決めたに
>すぎません。
>自分の名前の〈H〉が有音か無音かをフランス人に決められる
>スジアイもないし。
だとすると、カタカナ表記の店名は「サラマンジェ・ド・ヒサシ・ワキサカ」が妥当かと思いますが。
って、冗談です、冗談です。(^ー^)/はい
自分でも何を言ってるのか分からなくなってきました。
「イザシ」の方がフランスかぶれっぽくていいと私も思います。
私はオヤジシェフさんより、もう少しオヤジです。
妻の誕生日は le Quatorze Juillet です。
早めに機会を作って訪問させて戴きたいと思います。
怒ってませんよっってマジで。
ご指摘の通り「フランスかぶれ」ですから店名はこのままでいきます。
お目にかかれるのを楽しみにしています。
ところでエリズィオンについてまきもの屋さんが解説してくれてますので見に行ってみてください。
リンク貼っておきます。
http://www.makimonoya.com/blog/item_1014.html
オヤジシェフ様、まきもの屋様
有難う御座いました。
いやいや、elisionひとつでも奥が深いですね~。
有音の"H"?
う~ん、やったに違いないけど、何せ、30年以上前の勉強ですので、解説を拝読しても思い出せません。(T_T)/~~~
覚えるのはやっぱり諦めて、そろそろ飲み始めます。
って、流石にまだ早いか…。