みなさん、「月刊専門料理」読んでますか?
今年の一月号から「エスコフィエを読む」という連載がスタートしてます。
この連載は、若いコックさんたちにLe guide culinaireに書かれていることを理解していただくための手助けとならんことを目的としています。『「料理の手引き」の手引き』です。
けれど、もうすでにシェフの立場におられるかたの中にも実は読んだことがないという人はたくさんいますよね?
現行の訳本は意味不明な文が多いし、原書を読むとなると辞書と首っ引きで一ページ読むのに丸一日…。疲れちゃって投げだしちゃう気持ちはよくわかります。けれどスタッフから質問されたときに答えられないのはシェフとしちゃ情けないですよ。
この機会にシェフの皆さんもぜひ読んでくださいな。
で、この連載の中で不肖ワタクシ、解説を担当させていただいております。
出版物ですから偏向と取られかねないことや個人的な意見は書けませんし、誌面の都合がありますから言いたいことをすべて盛り込むことはできません。
というわけで解説の解説をやらせて下さい。
けれどここに書くことは一般論ではなくキュイジニエ・ワキサカの見解として読んでくださいね。
3月号では「Sole bonne-femme 舌びらめのボヌ・ファム」を取り上げました。
読んでいただけばお分かりの通り、この方法でやるかたは今はもういないと思われます。けれどその料理の原点を「知っている」ことが大事なんです。知らずにやっていても結果に差は見えにくいかもしれませんが、「基本」は押さえておきましょう。
ヌーヴェル・キュイジーヌがスタンダードとなった今、まず「ヴルテ」*を用意することがなくなりました。小麦粉でつなぐソースは重いと。とにかく料理は軽くなくちゃいけないんだそうで・・・。
そこで登場したのが、ヴルテの代わりにかき立てたオランデーズやサバイヨンを使う方法です。空気を含んでいるので文字通り軽いし、グラセした時の色付けもきれいにできます。しかし軽いのはテクスチャーであって、カロリーを考えると昔の調理法に比べてさほど軽いとは言えませんね。今はもっと進化して油脂をまったく使わないでやる人もいるかもしれませんが。
仕立てがどうであれ、この料理の最大のポイントはやはりキュイですな。
ボコボコ沸騰させちゃどんなに見てくれに気を遣っても価値はゼロですよ。そこんとこ、よ~く気を付けてください。
魚はフィレでもいいんですが、entier(丸のまま)のほうが断然おいしくできます。オペレーション的にムリ、という店がほとんどでしょうけど、デクパージュができるサーヴィスがいるならそうすべきです。
というか、サーヴィスの仕事も実は技術職なんですよ。まじめに取り組んだらやりがいのある仕事だと思うんですけどねぇ。優秀な人材が集まらないのは給料が安いからにほかならないんですが、それはレストランを利用するお客さんにとっての不利益でしょ?飲食業はいまだデフレから脱却できませんが、お客さんにも一緒に考えていただきたい問題ではあります。
ちょっと料理から脱線気味なのでこのへんにしときます。
*「ヴルテ」なんか見たことない。だから知らない。そりゃそうですね。
わからない人は「月刊専門料理」を買いに本屋へ走れ!詳しく解説されています。
p.s. 翻訳と注釈をしてくださっている「まきもの屋」さんが連動ブログを展開中です。フランス語の読みかた、参考にすべき書籍などが紹介されています。こちらもぜひご覧ください。
「月刊専門料理」大好きな雑誌ですが買うのは古本屋(笑),毎月の新刊は楽しく「立ち読み」にて拝見しています.
基本をふまえた上での発展を理解する事は重要ですね.シロウトですがとてもためになります.最近の傾向として軽さが求められるのは確か.その結果ソースも既存の分類に当てはまらない物も多いのでしょうか?
サーヴの際に基本の何々をアレンジした等の説明を聞き漏らさない様にしたい物です.
素晴らしいデクパージュを拝見するのもレストランで食事する楽しみの一つですから,お客の注文した皿で練習する事の無い様,若い人には厨房で秘かに鍛錬を積んで欲しいですね.