旧「オヤジのフレンチ」

続「グラン・メゾン」についての考察 ※2019/10/30追記あり

※このエントリは2016年7月に投稿されたものです(なにかをディスってません)

このところ「グランメゾン」で検索してこのブログにお越しになる方がとても多いんです。実はこのブログのアクセス数No,1なのがこのエントリなのです。

試みにグーグル先生に「グランメゾン」について質問してみると、このエントリがまっ先に表示されることが分かりまして、こんな一介の料理人の怪しげな仮説をばら撒いていることを知って恐縮しております。

恐縮ついでにもう一度言いますが、「グランメゾン」という表現はやっぱり気持ち悪いです。どうしてもそう言わせたいなら、grand’ maisonとでもするべきでしょうが、仏語としてはこれも「ない」と私の知己のある学者先生は断言されています。

とはいえ、なんにでも例外はあるわけで、たとえばgrand-mère(祖母)、grand-croix(大十字章)、Grand-Chambre(大法廷)等々。いずれも女性名詞です。けれどこれらは二つの単語をくっつけてできたひとつの単語なわけで、だから「グランメゾン」もアリだ、という論証にはなり得ない。

けれど、grand maisonで検索をかければ仏語のページがワラワラ出てきますから、絶対にないなどと断言はできないわけで、「決定的な間違い」と述べたことについては別のエントリで撤回・謝罪をいたしましたが、正しくないことに変わりはないのであります。何人ものフランス人に聞き取り調査もしましたけど、答えは100%「ない」でした。

そもそも高級レストランの意味で”grande maison”と表現することすらないのでは?という問いにはもうすでに結論は出ている。と申し上げます。一般的な会話の中で出ることはまれであってもあるのです。同じ意味で用いられるものとしてgrande tableも然り。

一度定着したコトバは「間違っている」とどんなに高名な学者さんが叫んでもなくなることはないでしょうし、まして私の主張なんかすべての日本人にとってどうでもいいことではありますが、ワタクシとしてはやっぱり気持ち悪いので今後も「グランド・メゾン」で押し通す予定(笑)であることを宣言します。

「グランメゾン」で検索される方の目的が何であるのかまでは分かりませんが、グラン?グランド?と疑問を感じている方には、ぜひ「グランド・メゾン」を採用してください。と申し上げます。

以上、どうでもいい「中年の主張」を終わります。


2019/10/30追記:「フランスではgrande maisonなんて表現はしない」とおっしゃる方がまだいるようなので貼っときます。

ル・サンクのシェフに就いたクリスチャン ル スケールのインタヴュー

(ル・サンクからオファーを受けたときどのように対応したかを問われて)
<D’abord une grande surprise. (…) Je pensais que j’étais insignifiant sur le marché du travail et puis soudain voilà qu’une grande maison comme le Cinq s’intéresse à moi.>
「とても驚いた。(中略)雇用市場で私などとるに足らない存在だと思っていたら、ル・サンクのようなグランド メゾンが突然私に関心を示した」

chef

25 Responses to “続「グラン・メゾン」についての考察 ※2019/10/30追記あり”

  1. 匿名 2016年7月25日 at 19:34 # 返信

    good!

    • admin
      admin 2016年7月25日 at 19:57 # 返信

      good

  2. 匿名 2016年7月26日 at 00:03 # 返信

    どうでもいい話だわ

  3. Britty 2016年9月3日 at 14:56 # 返信

    あるテレビ番組で偶然に目にして、猛烈な違和感に翌日検索をかけてこのブログにたどりついた来訪者です。同じような経緯の方は他にもいるかと。
    前エントリでの[nd]+[m]を日本人が聞きなすと間の[d]が落ちて聞こえやすい、という御説には説得力があります。日本人は子音の連続を聞くのが不得手ですから。

    • chef
      chef 2016年9月3日 at 22:32 # 返信

      コメントをありがとうございます。
      フレンチ関係者でも「グランメゾン」を使う人はたくさんおりまして、もう無理だなと諦観しております。ま、さして重大な問題でもありませんから、そこに執着する必要もないのかな、と近頃は思っております。

  4. sho 2016年12月11日 at 20:04 # 返信

    フランス語学習中に興味深いブログを見つけまして、、

    http://ecole.kikounette.biz/approfondir/etymologie/grandmre.html
    ついでに
    http://ecole.kikounette.biz/approfondir/etymologie/maison.html

    男女同形の名残である可能性はどうでしょうか?
    この方の読んだ辞典の編纂者にまでたどり着ければ、あるいは謎が解けるかも知れません。

    • chef
      chef 2016年12月12日 at 13:00 # 返信

      コメントをありがとうございます。
      私の持ってる辞書(小学館ロベール仏和大辞典)にも同趣旨のことが書いてあります。
      grand-という形をとるとも。つまり一つの単語として扱うということです。

      日本人が「グランメゾン」と書いたり発語したりするのは単なる誤解と思いますけどね。
      仏語を学習する身としてはやっぱり気になりますよね。

  5. 30年以上前にかじった人 2019年10月14日 at 19:26 # 返信

    キムタクの発音が悪いのか、訳語で始めようの恐らくallez …のあとが聞き取れません。

    • chef
      chef 2019年10月14日 at 20:05 # 返信

      はい確認しました。
      aller on y va と言ってますね。
      さあ、行くぞ!って感じです。

      • chef
        chef 2019年10月21日 at 00:55 # 返信

        これからどこかへ行くようなシチェーションなのかな?ケータリングとか。
        そうでないならちょっと違和感はあります。

        • 匿名 2019年11月2日 at 15:21 # 返信

          初めまして。

          皆さん同様(?)、TVドラマの影響でググって来ました。

          私も「グランメゾン」は不自然に感じてなりません。

          TVの話題の時も、自然と「グランド・メゾン」「ラ・グランド・メゾン」と言ってしまいます。

          chefさんは、「マスコミにかなわない」と敗北宣言をされていますが、
          この記事がアクセスNO.1 で、さらにグーグルの上位に表示されること自体が、「グランメゾン」を不自然に(間違っていると)感じる方が多い証拠ではないでしょうか。

          うん、やっぱり私は違和感がぬぐえません。
          (フランス滞在経験ありの仏検準一級です)

          同じように感じて下さる方がいらして嬉しいです。

          • 匿名 2019年11月2日 at 15:23 #

            すみません、投稿の仕方が良くわからなくて、
            30年以上前にかじった方さんにぶら下がってしまいました。
            失礼しました

          • chef
            chef 2019年11月2日 at 17:27 #

            ほらぁ~、みんな聞いた?
            仏検準一級ってすごいんだよ?
            そんな人だってグランメゾンはおかしいって言ってるじゃん。

            だからよいこのみんなはちゃんとグランド メゾンって言ってね。

        • 仏検準一級 2019年11月8日 at 17:18 # 返信

          一週間のご無沙汰です。11/2にコメントさせて頂いた者です。

          On y va は、あれで良いのです。

          Allez!On y va!ともに感動詞として使われていますので、va に「行く」という意味はありません。

          chefさんが仰るように、「行くぞ!」って感じですが、どこかに場所を移動しなくても、「行こう!」⇒「やろう!」⇒「始めよう!(字幕)」という意味で使っているので、合っています。

          とはいえ、ドラマのシーンでは、お客様の到着ギリギリのタイミングで料理が完成しています。料理するという動作を「始めよう」ではなくて、「さぁ、渾身の料理をサーブするぞ、ここからが本番だぞ、勝負が始まるぞ!」って感じだと思って観ました。

          <以下、おまけ>

          On y va は感動詞としての基本の意味だと、「さぁ、やろう(始めよう)!」と周囲を誘うように使います。on が不定代名詞なので、基本は自分を含む複数の人に対して使うのは chefさんもご存じの通りですが、
          私は、自分一人でも自身を奮い立たせる時に「Allez!」「On y va!」と自分に言い聞かせるようにも使います。「頑張るぞ!」って感じです。(*^。^*)

          • chef
            chef 2019年11月9日 at 01:08 #

            ご指摘ありがとうございます。
            おっしゃる通りと思います。ネットに上がっている予告編だけを観て回答しましたのでシチュエーションを理解しておりませんでした。
            移動しなくてもvas-y!(やれ!)なんかよく言いますしね。

            で、ですね。
            (仏検準一級の方に楯突くつもりはないんです。純粋に御意見をお聞きしたいと思って)

            そのような場面であるなら、なおのことon y vaって言われるとなんか力が抜ける感があるのですよね。
            私の場合調理場という特殊な環境だったからなのかもしれませんが、仕事が終わって「さ、帰ろうか」みたいな時に言うことと感じるのです。
            つまり緊迫感がない。

            料理出しの張りつめた時間帯(我々はそれをcoup de feuと言いますが通じますか?)にon y vaは「ない」なと思いまして。
            (私はちゃんとした仏語の教育は受けていません。「体感」「経験」のみで申し上げることの失礼は承知しております。すみません)

          • 匿名 2019年11月9日 at 17:39 #

            Chefさん、コメ返を有難うございます。

            お気遣い有難うございます。失礼だなんて思いも致しませんのでご安心ください。

            言語は生きていますので、机上の学習や辞書の定義よりも、chefさんのように現場で身につけられたものの方が勝ります。

            私は、もう日本が長くなって、生きたフランス語には接しておりませんので、どうぞお気遣いなくお願いします。

            さて、その、化石のように古くなった私の感覚ですと、仕事が終わって「さぁ、帰ろうか」という時は、「On s’en va」を使いたくなります。
            いかがでしょうか。

  6. petitcervin 2019年10月24日 at 18:33 # 返信

    初めまして、いい加減なフランス語の店名には慣れっこになっていますが、テレビにまで出て来ると問題ですね!
    https://sun.ap.teacup.com/petitcervin/

    • chef
      chef 2019年10月24日 at 20:30 # 返信

      コメントをありがとうございます。
      おそらく制作サイドはタイトルにGRAND MAISONと書いちゃうくらいだから「グランメゾン」は和製仏語である!としたのだと推測しています。
      ささやかな抵抗をしてきましたがマスメディアにはかないません。
      もう諦めました。敗北宣言ですw

  7. フランス在住 2019年11月6日 at 08:55 # 返信

    インターネットを使っているとクッキーがたまるらしくて、検索すると欲しくもない情報がヒットするので、少し前から出て来る「グランメゾン東京」とは何のことなのか気になっておりました。東京にあるマンションの名前なのかと思ったのですが、シェフのお話しなのですね。

    フランスでも、特に若者は、何でも縮めて発音して、それを表記するとアポストロフを入れた形になるので、Grand’Maisonと言う人があるかも知れませんが、それを日本人が使うのは奇妙。それに、TBSのサイトでは「GRAND MAISON TOKYO」と書いてある。???…

    典型的な franponais(フランポネ)なのでしょうね。

    • フランス在住 2019年11月6日 at 09:11 # 返信

      途中で送信してしまいました。

      日本では「Petit coin」などというのをレストランの名前にしているくらいなので、こういうフランポネは気にせずに、お料理に拘ってくださいとエールを送りたかったのです!

    • chef
      chef 2019年11月6日 at 11:22 # 返信

      フランポネには私も同意です。
      ドラマのタイトルにまでなったらもうこれはどうしようもない。諦めてます。
      ただ、追記に書いたとおり、和製仏語だと主張される方は性数不一致だからという理由ではなく、そもそもフランス語には「ない」とおっしゃるので私にはどうにも受け入れがたいのです。

      • フランス在住 2019年11月6日 at 18:18 # 返信

        Grande MaisonかGrand’Maisonだったら問題ないはずで、「フランスにはない」とは言えないと思います。

        grande maisonは「大きな家」の意味で普通に使いますし、大きいわけでなくても、grande familleは「名家」、grand artisteは「偉大な芸術家」ですから。

        問題は、トップレベルのレストランのことをgrande maisonと呼ぶのかどうか。でも、追記で引用なさった発言は、業界の人の言葉なので、使い方を間違っていたはずはない。

        正しいフランス語を使う友人に聞いてみたら、私がいるブルゴーニュ地方にある3つ星レストランの名を挙げて、そういうところは「grandes maisons」と呼ぶし、「シェフはgrande maisonで修行した」という言い方もよくする、とあっさり答えました。

        それで、レストランでの研修をキーワードにして検索したら、こんなのも出てきました:

        Pourquoi effectuer un stage dans un restaurant …
        Tout les secrets d’un stage dans un restaurant gastronomique, en cuisine ou … Une fois une belle expérience acquise dans les grandes maisons, il vous sera tout à fait … Une fois ces avantages posés et une formation sérieuse suivie, le stage …

        « Tout les secrets »は « Tous les secrets »の間違いだと思うので、このサイトは正しフランス語を使っていないのかも知れない。誰が書いているのか確認しようとしたら、リンクが開かないのでした。

        >フランスには「ない」とおっしゃるので私にはどうにも受け入れがたいのです。

        chefさんは正しい、と断定して良いと思います。

        それでも、私には不思議が残りました。

        ほんの少しフランス語をかじっただけでも名詞と形容詞の性は一致させなければならないことくらいは知っているはずなので、製作費をかけて番組を作っているテレビ局がそんな初歩的な間違いを入れたタイトルにしたのは信じられない。それなのに、なぜ「grande maison」という立派な用語を見つけられたのかが、もっと不思議…。

        このテレビ番組は、アメリカ映画『二ツ星の料理人』に酷似しているとニュースになっているので、その映画で使われていた用語を「グランメゾン」にした、あるいは、アメリカ映画でその間違った用語を使っていたのかなとも思いました。

        https://www.jprime.jp/articles/-/16428

  8. 匿名 2019年11月7日 at 16:06 # 返信

    こんにちわ。シェフがあのドラマを見てると知って驚きました。
    先日のドラマではライバルのお店が出した料理が鹿肉のタルタルでしたが
    あれは生食なんでしょうか?

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください