「なんでタルトプラリーヌがないの?」と半ばお叱りに近いリクエストをいただきましたので。
確かにサラマンジェの立ち位置からするとやってなきゃいけませんよね。ろくなデザートがないリヨン地方でほぼ唯一といっていいデザートなんですから。
とは言えね、とても日本の皆様にお喜びいただけるような代物じゃないんですよ。だからほとんど知られていないんでしょ。
まずはビジュアルからご覧いただきましょうか。
まず真っ赤っかにするのはお約束のようですね。リヨン地方の郷土菓子の一つにプラリーヌルージュというアーモンドに赤い糖衣をかけたものがありまして、それをクリームで煮詰めたもので作るタルトなのであります。
つまりアーモンドクリームのタルトなんですが、これがとにかく無慈悲に甘い!味の変化もなくただひたすら甘いのですよ。さらに追い打ちをかけるようにずっしりと重い。
デザートのレヴューに「甘すぎなくておいしい♡」なんて書いちゃうヒトに受け入れられる余地はまるでありません。古き良き時代の典型的なフランス郷土菓子ではありますが。
しかもその主材料たるプラリーヌルージュなんか日本で手に入らないし・・・あ、いけね。こんな言い訳をすると怒られちゃう。
今でこそいろんなフランスの食材も手に入れやすくなりましたけど、私の先輩たちの時代はナイナイ尽くしの中でいろいろ工夫してやってきたのですよね。無いなら作れと。
というわけで生アーモンドの皮をむくところから始めましたですよ。
これをローストして糖衣をかける作業を何回も繰り返します。
これを砕いて生クリームで煮て糖度を高めていきます。凝固剤は何も入りません。つまりキャラメルのようなものです。
これを空焼きしたタルト生地に流してさらに数分焼いて
タルトプラリーヌの出来上がり♬
甘さを緩和してちょっと酸味を持たせるためにフランボワーズのピュレを混ぜてみました。
さらにお口直しに紅茶とアマレットのソルベを添えて。意外とイケるじゃね?コレ。
私自身はこんなの売れね~よ、と思っても人気になるデザートもありましてね、サラマンジェのヌガーグラセのためにわざわざフランスまでお使いに行ってくれる人までいるのですよ。ありがたいことです。
汁漏れを恐れて飛行機に備え付けのスリッパの袋に入れてきた!(笑)
このタルトプラリーヌもそんなふうに定番に育っていったらうれしいな、と思う次第です。
ところでどうしてこんなに赤くするのかって?わかりません。
「多分赤くしたほうが売れると思ったんじゃね?」ってなことがこちらのサイトには書いてあります。
以上よろしくです。