旧「オヤジのフレンチ」

飲食事業者への苦言

原発問題はいつになったら収束するのやら・・・。これが収まらないとどうにも不安でなりませんな。

近隣の県では野菜から放射性物質が検出されて、出荷規制や出荷自粛の措置が取られていますが、生産者の皆さんにとっては、お気の毒などと言うにはあまりにつらい状況であることは容易に想像できます。

サラマンジェでお取引をしている八百屋さんによれば、規制がかかっていない野菜まで買い控えで売れない状況だと聞きます。この八百屋さんは築地の仲卸業者さんで、都内のホテル・レストランにもたくさん卸していますが、特にホテルが買ってくれないんだそうです。

今流通している野菜は安全が確認されているから流通しているんですよね?食べて問題のあるものはないということは連日テレビ・新聞で報道されているとおりです。なのに福島は言うに及ばず、関東の野菜はまるで売れない。「なんとなく不安」だから。

この状況を「風評被害」という。

なんてね、大文字にするほどの大発見じゃない。そんなことはみんな知ってますよね。だから、そんな野菜だからこそ積極的に食べようと考える人もたくさんいます。生産者の支援のためにも。

なのにわれわれ飲食に携わる人間が「何となく不安」に思う消費者におもねって風評被害を拡大させている現実。料理人をしている友人・知人に聞いてみたところ、勤める職場でもやはり同じ決定がされたといいます。

客商売ですから少しでも不安に思う人がいるならそういうものは使わない、というのは一見正論のように聞こえますが、それは「迎合」というのではないだろうか?それは今われわれがとるべき態度として正しいだろうか?

前回も言いましたが、われわれと生産者の関係は持ちつ持たれつです。生産者からみれば消費者と同じように私たち飲食事業者も「お客さん」ですが、私たちは野菜を「使ってやっている」のではないし、むしろ「使わせていただく」という謙虚な気持ちを持たなければ生産者とその食材に対するリスペクトも生まれないと思うんです。
こんな時にこそわれわれは積極的に使って生産者を支援しなきゃいけないのじゃないだろうか?

以前から食材の産地表示をしている飲食店はありましたが、関東の野菜がすっかり姿を消した店もあります。消費者の皆さんにとってはやはりそのほうが「安心」ですか?

今、関東の野菜を使うことは「食の安全」に敏感な消費者を失いかねないという危惧と、関東の野菜を忌避することは風評被害のお先棒を担ぐことになるという呵責。

それらの野菜を使わないと決めたホテル・レストランも、それを積極的にはアナウンスしないところに苦悩が読み取れます。

皆さんはどう思いますか?

chef

17 Responses to “飲食事業者への苦言”

  1. laliquehulotte 2011年4月5日 at 22:12 # 返信

    という事は、サラマンジェ・ド・イザシ・ワキサカさんさんでは、勿論それらの野菜を、むしろ積極的に使われているのですね?
    ご自分のお店での対応について、言及がないのですが、そのようなお考えをお持ちであるならば、「サラマンジェ・ド・イザシ・ワキサカではそういう野菜を使います。」と文面の中で、きちんと表明した方が良いかと思いますが。
    仰る事はよく分かります。
    ただ、難しいのは
    > 今流通している野菜は安全が確認されているから流通しているんですよね?食べて問題のあるものはないということは連日テレビ・新聞で報道されているとおりです。
    この「安全が確認されている」という事自体を信用していない人が大勢(多分)いるという事でしょう。
    私自身について言えば、この野菜の問題はともかく、原発事故関連における政府やマスコミ、そしてそこに出てくる学者と称する人達の言説を、そのまま信じる事は不可能です。
    辻褄の合わない事や疑問に感じる事だらけではありませんか?
    本当の意味での「専門家」が「事実」を報道しているように思えますか?
    野菜の問題も、100%根拠のない「風評」と言い切れるのでしょうか?
    だからこそ「風評」とも言えますが…。
    > 今流通している野菜は安全が確認されているから流通しているんですよね?
    いみじくも、脇坂さんご自身が疑問形で書いておられるここに何かの示唆も感じます。
    とりあえず、サラマンジェ・ド・イザシ・ワキサカさんが「うちでは、そういう野菜を使う。」と表明されたとしても、私は食べに行きますが。(^^;;(^^;;
    あのお料理の魅力には勝てません。(^ー^)/はい。

  2. 脇坂尚 2011年4月6日 at 04:05 # 返信

    laliquehulotte様
    原発事故が起きてからの3週間というもの、私はこのことばかりずっと考えてきました。そしてこのエントリを書くことについても逡巡しました。あなたが思われているとおり私もお客さんの反応を恐れたことを告白します。その逡巡ぶりが表れた文章が突っ込みどころなのだということも自覚しております。
    おっしゃる通り、この風評被害は政府や東電の発表が信用できないと消費者が思っているところから発しています。現にサンドウィッチチェーンのサブウェイなどでは独自に食材の放射能検査を外部に委託しています(4/4付 日経MJ)。
    このような事態は憂うべきことですが、原子力の専門家でない私たちは専門家の意見に従うことが混乱を増大させないために必要なことと私は考えます。そう考えたからこのエントリを書きました。
    あなたのご意見からはやはり関東の野菜に不安を感じていることがうかがえますが合理的な理由は見当たらないように思いますがいかがでしょう。
    いえ、合理的な理由などなくてもそのように不安を感じるのは当然のことと思います。その不安を払しょくできない政府・東電に私も不満を覚えますが、「何も信じられない」とパニックになっている消費者におもねるような対応をとる飲食事業者に私は意見したいのです。
    そして賢明なる消費者の皆さんには冷静な判断をしていただくことをお願いします。
    最後になりましたが、サラマンジェではもともとメニューに占める野菜の構成比が低いので「積極的」といえるほどではないにしても関東の野菜を使っておりますし、一部の野菜については群馬からの産直に切り替えました。また業界団体を通じて風評被害の回復に向けて活動を始めたところであることを申し添えておきます。
    長文、失礼しました。

  3. kyoko 2011年4月9日 at 00:55 # 返信

    北海道の京子です。お久です。北海道でも大変ですよ!一時米や電池や水やらが店頭から消えたし、登別温泉も観光客が激減し、バンバン休業に追い込まれてます…宅配のトドックも関東の野菜が届きません。あたしは、無知なのでたばこも酒も添加物も農薬も放射線物質も一緒じゃねえの?ぐらいな考えだったので、今回の風評被害はみんなすごい気にしてるんだと驚きでした。なのにあたしはたばこが買えなくなる?大変だ~と買い占めてました…ダメダメですね・・・

  4. オヤジシェフ 2011年4月9日 at 12:27 # 返信

    タバコも酒も添加物も農薬も放射性物質も、カラダにワルイっていう点じゃ、まぁ同じようなもんですな。
    けど、今の放射能のレヴェルならタバコのほうが健康被害のリスクは高いそうですよ。
    「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。」
    「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます。」
    「喫煙は、あなたにとって脳卒中の危険性を高めます。」
    「喫煙は、あなたにとって肺気腫を悪化させる危険性を高めます。」
    「Fumer tué」
    「Fumer nuit gravement à votre santé」

  5. ai-muk 2011年4月9日 at 13:28 # 返信

    脇坂シェフのお料理とブログのファンです。初めてコメントします。
    ホテルが関東の野菜を買い控えているとは、とてもショックです。
    ちなみに、風評被害という言葉はあやふやで本質を表していないので、私は差別被害と呼んでいます。これ、大文字で書きたいです。
    皆それぞれ独自の正義感があると思うのですが、結局は差別でしかないと思います。
    多少の放射性物質よりも、私はタバコの方が本当に苦手です。煙モクモクの中に長時間いると、その後数週間咳き込みます。交通事故に懲りて車の運転もやめました。食品添加物も過敏になり過ぎない程度に多少意識しています。
    しかし多くの人は、タバコも運転も添加物も平気なのに、放射能が怖いというのが不可解です。
    関東や東北の野菜を買い控えるホテルは、まず完全禁煙にしていなければ絶対おかしいし、お客さまの交通事故を防ぐためにお料理を宅配するとか、それぐらい徹底してほしいです。

  6. 通りすがり 2011年4月10日 at 17:03 # 返信

    喫煙の怖さは当人の問題ですが、放射能に対する不安は相手選ばず。現在は野菜についての不安が問題になっていますが、畜産、海産物から放射能汚染が報告されるのも時間の問題でしょう。ヴェジタリアン対応をしているホテルが不安を想定する産地の野菜を使わないのは、ある意味当然ではないでしょうか?この問題について野菜料理のほとんど無いビストロの主が、意見を述べても見えない、経験の無い、放射能汚染への不安を持つ飲食店事業者並びに消費者には、届かぬ声かと思います。

  7. 脇坂尚 2011年4月11日 at 12:46 # 返信

    ご意見をいただきありがとうございます。
    違う意見があることは当然ですし、その考え方を私も否定はできません。
    私の声は届かないかもしれませんが、声を上げることは必要なことであろうと私は考えます。

  8. ひぐりん 2011年4月11日 at 20:27 # 返信

    「食べ物の真実」
    自分で管理して、自分で作った食品しか
    真実はわからない。
    野菜、豚、牛、魚、、育てられない。。。無理無理。。
    大丈夫と信じて食べてる。
    放射能よりもっと怖い真実も昔からあるはずなのに・・・
    科学的根拠(20~30年の経過観察)が無いだけで、安全らしい。
    だから信じて食べる。
    お店も、料理に対しての姿勢がまっすぐであれば、でてくる料理すべて
    「美味しく食べる」ことができる。
    選択の自由、見解の違い、味覚の違い、
    好みの違い。。。なだけなのかも。。

  9. 凌駕D1 2011年4月14日 at 12:43 # 返信

    脇坂シェフのブログと料理のファンの1人です.
    仕事の都合で中部に引っ越したのでお店に伺う機会が本当に減ってしまい残念です.今回の野菜買い控え騒動は風評被害以外の何者でもないと思います.放射線モニタリンググラフを見てもほとんど変動がないし,そもそも自然界の放射線レベルは0にはなりませ.それなのに「何となく不安」の心理はよく分かりません.
    「安全基準が引き上げられるから不安」とか乳児には放射能0の水でなきゃいけない!などと科学的根拠に基づかない妄想にとらわれ,被爆?を恐れる一方,飲酒,喫煙の害には無頓着なんてナンセンスです.
    そんなに汚染されていることを恐れるなら,今までどれだけ「安全な食べ物」に注意を払ってきたのでしょうか?そもそも安全な食べ物って何?
    話が長くなりましたが関東の野菜もどんどん食べてます.お店を経営する以上シェフがお客さんの反応を恐れるのは当然.ボランティアでは無いのですから・・・.その上で,あえて客に迎合する飲食店へ苦言を呈する姿勢に賛同したいと思います.

  10. polo 2011年4月14日 at 17:09 # 返信

    「政府が安全だと言っても信じられないから食べない」という消費者がいることは理解できます。
    そういう消費者がいるから,東北・関東産の食材を使わないというお店があることはやむを得ないです。
    ただ,私自身の考えは違います。
    誰かが東北・関東産の食材を食べなかったら,生産者はみんな生活していけなくなってしまいます。
    だから,私は,いままでと同じように東北・関東産の食材を(敢えて選んで食べることまではしませんが)口にするようにしています。
    それが,もしかしたら自分の寿命を縮めることになるかも知れませんが,それはそれで天の配剤と考えることにします。
    今回の記事を拝見して,脇坂シェフのスタンスも私に近いのかなと感じ,嬉しくなりました。

  11. 佐藤真哉 2011年4月24日 at 20:41 # 返信

    ブログ初心者農家のセガレです。
    私は、青森で農業を営み今回の風評被害には、他人事ではなく心を痛めています。
    シェフの"使わせていただく"に心打たれました。私も"作らせていただきます"と決心し★誰の為に作るのか★テーマに、日々精進致します。

  12. 一児の母 2011年4月25日 at 08:37 # 返信

    とおりすがりの一児の母です。
    使用している野菜が、どこ産かというのを気にしているわけではなく、使用している野菜の放射線量の数値がどれくらいで、原発の事故後急に引き上げられた日本の暫定基準値ではなく、世界の基準値内であるかを気にしています。
    それが明確になっていないから、東北及び関東の野菜を使用しているとなると、敬遠してしまいます。
    子供を被曝させたくないというのが、大きな理由です。

  13. 脇坂尚 2011年4月25日 at 13:14 # 返信

    ご心配はごもっともです。小さいお子さんがいるとなればなおさらですね。
    私は専門家ではありませんから、現在の「暫定基準値」の妥当性について語る素養は持ち合わせておりません。
    各地の大気中の放射線量は毎日発表されていますが、おっしゃられるように産物の検出値はなぜか発表されません。
    それが不安を増大させている面があるのですから、それらの数値を発表することはこの風評被害を防ぐうえで必要なことであろうと私も思っております。
    ネット上には様々な情報があふれています。中には学術界に居場所を失った元学者の、不安を煽ることが目的としか思えないものもあります。
    アヤシゲな情報に振り回されることのないようにしたいものです。

  14. 通りすがり 2011年5月22日 at 17:00 # 返信

    何と申しましょうか、政府やメディアの発表をあまりにもナイーブに鵜呑みになさっているかと伺います。
    野菜は、いちいち検査して出荷しているのではありません。一定間隔で特定地域の一部の野菜を検査してその結果を発表しているだけです。それも、水で洗って検査していますから、線量は出荷状態よりも減っています。また、放射性物質の降下は一様ではなく、場所によって濃淡はありますが、検査はそういう点を考慮していません。
    放射性物質の相当量の降下が確認されている地域(東北・関東)では、デフォルトで、汚染されていると見るのが合理的でしょう。そういう地域の農産物については、放射線量が無視できるほど低いと証明されない限りは、ある程度の線量があるとみなす方が、リスク管理上は合理的です。
    従って、消費者が東北・関東の野菜を買わないのは、「風評」等に基づく行為ではではなく、合理的な推定に基づく行為です。実際の測定で安全と証明されたものを不安で買っていないのではなく、現実に危険な可能性があるものを買っていないのですから。
    最近になっての神奈川の茶葉でのセシウムの検出は、消費者の忌避行動が間違いではないことを如実に示すものです。
    それから、不安を煽ることを目的で警告を発してるような研究者はいないと思います。掲示板等で匿名個人がそういうことをすることはあっても、自分の名前で発言されている研究者の方々が、真摯に良心に基づいて発言をされていることは内容を見れば明らかだと思いますが。

  15. オヤジシェフ 2011年5月23日 at 13:42 # 返信

    専門家でも意見が大きく分かれる事柄です。「絶対に安全」などとはだれにも断言できることではありませんね。
    結局のところ30年、50年先の検証を待たねばならないということでしょう。けど「今」そんなことを言ってもしょうがないので、どの程度の放射線量なら許容できるのかについて、消費者の不安を払しょくできない現政権には失望を通り越して怒りすら覚えます。
    私の論旨は「過剰な反応は避けるべき」というものですが、どこからが「過剰」なのかは各々の受け止めかたによって違うでしょう。
    この議論はどこまで行っても平行線であろうと思われます。そもそも私のような素人が取り上げるべきテーマではなかったということです。

  16. のいち 2011年7月30日 at 15:29 # 返信

    「風評被害」などでは決してなく、
    危険な食材が流通している事実があると思っております。
    そのほうが安心ですか?
    と問われれば、勿論、
    「静岡あたりから東の地域の農産物・畜産物でない方が安心です」
    と率直に答えたいと思います。
    生産者も後ろ暗いことがないのであれば
    積極的に放射線検査を行えば良いでしょう。
    無闇矢鱈に「支援」と称して客に内部被爆させるのが
    良心的な飲食業の姿とは思えません。

  17. オヤジシェフ 2011年8月1日 at 13:33 # 返信

    このエントリをアップした4月の時点で私はこう考えていたということですが、ここへきて牛肉にまで汚染が及ぶに至って、政府の後手に回った対応は慙愧に堪えません。
    とはいえ、野菜に対する私の態度は変えるつもりがありません。
    このテーマはどんなに議論を尽くしても結論を見ることはないでしょう。私もうかつな発言をしたものだと後悔する部分もありますが、これに懲りて政治的な発言は控えることにします。
    あなたのコメントの最後のセンテンスはいささか乱暴で承服しませんが、ご自身が正しいと考える言動をすることを私は否定するつもりもありません。同じように私も自分が正しいと思う行動をします。
    飲食店の選択の自由はあなたにあります。利用の際には十分にリサーチをして「非良心的」な店にはいかぬようご注意ください。

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