旧「オヤジのフレンチ」

技術講座 Matelote d’Anguille

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Boudin noir以来3年ぶりの技術講座です。
(したがって今日のネタもプロ向けです)

ここ日本ではウナギといえば夏と相場が決まっております。

なぜか?

平賀源内のプロモーションのおかげでもありますが、ビタミンAが豊富で夏バテに効く、というのは本当のようです。

確かに旬はもうちょっとあとですけど、「ず~っとそうしてきたから」ってことでヨシとしときましょう。

そんなわけでサラマンジェでも「ウナギのマトロート」は夏のスペシャリテでございます。

かば焼き以外のウナギの料理って、日本人にはなかなか受け入れてもらえないんで、これも“売れない料理”ではありますが、本日は“食べておいしい”マトロートの秘伝の奥義を大公開でございます。

料理人のみならず、フランス料理好きの若奥様も疲れた旦那様にぜひ!

まず、生きたウナギを買ってきます。

P1000875_3 サイズは「3P」と指定してください。〇Pは1kgで何尾かってことで、数字が大きくなるほどサイズは小さくなります。3Pは一番大きいサイズ。氷水にしばらく浸けておくと動きが鈍くなって扱いやすくなります。

P1000878 頭の付け根を出刃で叩いて失神させます。(っていうかフツー死ぬよね。けどウナギは死にません)

P1000894頭を新聞紙でつかんで、首の周りの皮に切り込みを入れ、縦に少々切り開く。

P1000888 骨抜きで皮をつかんで剥く。

P1000889 ある程度剥けたらあとは手でいっきに剥けます。

P1000896 頭と内臓を除いてきれいに洗ったら、背びれと腹びれをしっぽのほうから骨抜きでつまんで引き抜く。こうすると細かい骨も同時に取り除ける。

P1000898 鍋に玉ねぎ、ニンジン、セロリの薄切り(あまり薄くしないほうが後の作業がラク)とニンニクをつぶしたものを入れてオリーヴオイルで炒める。

その間にブツ切りにしたウナギにアセゾネしてフライパンで焼く。(※)P1000901

ここは動画でお見せできないのが残念でなりません。壮絶です。ぶつ切りのウナギがフライパンの中でのたうつんですから。間違いなく食欲減退します。
※動画追加しました

そんなことはともかく、ここ、ポイントです。しっかり色づくまで焼きましょう。
相当な量の脂が出てきます。この脂は生臭くなる原因ですからしっかり脂をきってから野菜の鍋に入れます。頭と内臓も一緒に入れる。

コニャックまたはマール・ド・ブルゴーニュでフランベして、赤ワインをひたひたまで注ぎ、ブーケ・ガルニを加えて30分程度煮る。
この間、徹底的にエキュメしてください。ここも大事なトコです。

煮上がったらウナギの身だけを取り出して、煮汁を濾し(フレしない)、ウナギと一緒にして冷ます。
ここまでがプレパレです。

提供のときは、ソースをブール・マニエでリエし、ガルニチュールは魚と一緒に煮たプチ・オニオンとシャンピニョン、 ハート型に切ったクルトン、(ある種のものには)ラルドンを添える。(par Prosper Montagné)

Matelote_danguille

ここからは知識編です。

マトロートという料理は、淡水魚をワイン(白・赤は問わない)で煮たものであることはプロのみなさんならご存知かと思います。
ときどき海水魚に「マトロート」という名前を付けて恥をかくヒトがいますが、例外が一つだけあります。à la Normandeにするときだけは海の魚を使うのですよ。
この時はフランベをカルヴァドスで、ムイエにはシードルを使い、クリームで仕上げます。
だから「サバの赤ワイン煮」にマトロートという名前を付けるのは、別の意味でやっぱり間違いです。

多くの場合、数種類の魚を使いますが、ウナギだけで作るものはà la meunièreということもありますが、ガルニチュールが違うので注意が必要です。

われわれ料理人よりフランス料理のことをよく知っている素人(お客さん)はゴマンといるのですよ。客をナメちゃいけません。メニューを書く時はちゃんと調べましょう。

この料理の悩ましいところは、ウナギがお安くないってことですな。中国で加工された半製品を使うってわけにはいきませんから。
そもそもレジョナルな料理なのに、高級店のかたもなぜかやりたい料理なんですねぇ、これって。 しかも売れないのに。
そんな高級店のMenu dégustationでちょこっとだけでいいなら、お値段は気になりませんが、ビストロだとそれなりの量が必要ですから、高級ウナギ屋さんと同等かそれ以上の値付けをしなきゃなりません。けどビビっちゃいけませんよ。やるなら自信を持って強気な値付けで勝負してください。

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※古典のルセットでは、魚も野菜も「焼く」「炒める」という指示はされてません。念のため。 これはà la façon de wakisakaです。だって秘伝の奥義ですから。

chef

8 Responses to “技術講座 Matelote d’Anguille”

  1. tommytsune 2010年6月27日 at 16:34 # 返信

    お誘いに預かりましたので、早速日程調整のうえ、サラマンジェファンの先輩とお伺いさせていただきます。
    ウナギですか!昔は生きてるところから割いて、串を打ち、白焼きにして、蒸して、そして焼いてと全部注文してから一気にやったものですが、最近はそんなウナギ屋さんは殆どなくなってしまいましたね。
    丁度、ご飯も一緒に炊き始めて、丁度50分くらいでできるんですよね。その間、ちょっと一杯、〆にウナギとなると本当にいい具合でした。
    大切なことは、こうするのと、しないのとでは味に差が出ることだと思います。
    まさかフランス料理の場合は注文してから、割き始める訳ではないですよね?
    ところで、シェフが言われる通り、ウナギは簡単には死なないですよね。割くどころか、頭だけにされても口をパクパクさせてました。そこに指を入れて獅子舞のように咬んでもらったことがあります。
    ハモなら流血するかもしれませんが、ウナギは大丈夫でした。
    ご利益あるのでしょうか?

  2. しょうちゃん 2010年7月3日 at 10:40 # 返信

    このブログを見ていてもたってもいられなくなり、マトロートとヌガーグラセ頂戴しにうかがいました!
    マトロート、いいお料理ですねー。ウナギでなければ成立しない、つまりはウナギってものをどうおいしく食べるかって料理です。フランス人の『解答』に感銘をうけました。ヌガーグラセも古臭いどころか・
    ・・「カリカリコリコリ」ちょっと癖になりそうなくせ者ですね。

  3. オヤジシェフ 2010年7月3日 at 11:16 # 返信

    お褒めにあずかり恐縮でございます。
    ほかの料理もお試しください。

  4. コンテッサ 2010年7月14日 at 14:27 # 返信

    イザシシェフ ジョワイヨ アニヴェルセル!Paris祭に生まれたなんて、素晴らしきフォルトゥナm(__)m遠くからお祝い申し上げますm(__)m

  5. オヤジシェフ 2010年7月14日 at 16:31 # 返信

    Merci Contessa!
    そう、ワタシはラッキーの星の下に生まれたオトコです。

  6. カトウ 2010年7月22日 at 10:03 # 返信

    シェフ、昨晩はありがとうございました!
    ごちそうさまでした!
    フレンチをいっしょにいただくのに、私にとっての最強のメンバーで伺え、さらに楽しく、おいしい時間でした。
    バヴェット、美味でした===!
    タブリエ・ド・サプールも、さすが!!
    また、伺いますね。
    ブログ、覚えていていただき、ちょっと焦りましたが、どうぞ、当方もときどき覗いてみてくださいませ。

  7. ローエングリン 2010年9月2日 at 00:21 # 返信

    今夜初めてお店におうかがいした者です。
    いやー、ほぼ四半世紀ぶりに、フレンチのウナギにリベンジできました。
    実は、その頃に仕事で訪れたブリュッセル・グランブラス脇にあった有名店「メゾンドシーニュ」(廃業したみたい?)で、季節のイチオシということで薦められるまま注文したのですが、当地では骨付きぶつ切り状態とは知らずそのまま口にしたら、骨まで味わうことになり、口の中を激しく怪我した痛ーい思い出がありました。とはいえ、顧客を接待だったこともあり、無理して談笑しながら食べたのですが、どうも泥くて頂けなかった・・・。それ以来25年間避けていました。
    しかし、今夜頂いたウナギはなんというか品格の違いを感じさせる程すばらしい逸品でした。生臭さはまったくないにもかかわらず、それでいて野趣あふれるウナギの力強さも失われていない。しかも、鰻重ではたれに負けてしまいがちのウナギ本来の肉の味も堪能でき、かつかば焼き風のホロホロとした食感も残る火加減で、シェフの匠の技を堪能させていただきました。煮汁をベースにしたソースも骨太でありながら繊細な味わいで感動しました。付け合わせのマッシュドポテトが皿中央に鎮座していますので、これと絡めて遠慮なくソースも最後まで味わえますので、安心です!
    正直、これを頂いたらご近所の某老舗鰻屋の鰻重なぞ目じゃありません。価格も圧倒的にリーズナブルですし。(ただし、たまに浮気することはあるかもしれませんが・・・)
    四半世紀ぶりのリベンジと新しい味覚との出会いの感動を味わせて頂いた興奮のあまり、長い駄文連ね申し訳ありませんでした。
    他の料理も素晴らしかったです。薦めてくださったマダムにも御礼を。
    また、機会あれば寄らせていただきます。ご馳走さまでした。

  8. オヤジシェフ 2010年9月2日 at 00:58 # 返信

    ローエングリンさま
    過分なお言葉をいただき恐縮至極でございます。
    益々精進を重ね、「本物」の域に近づきたいと願っております。
    どうぞこれからもごひいきのほど、よろしくお願いいたします。

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