旧「オヤジのフレンチ」

「流行りの料理」について考えてみる

 

(※2/27補記。
少々気になってはいたんですが、やっぱりツッコミが入った(ような気がする)ので、「フォアグラ」とした表記を「フォワグラ」に改めました。発音にできる限り忠実な表記ってのが望ましい、っていうよりそうあるべきなのですから。)

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「フォワグラ大根」

懐かしい響きですな。
あの「鉄人シェフ」(これまた郷愁を誘う言葉ですが)、石鍋シェフのスペシャリテでありました。
日本中の料理人が真似しましたよ。おかげですっかり手垢にまみれた感じになっちゃいましたけど。

もうクイーン・アリス以外ではお目にかかれないでしょうな。

時は「料理の鉄人」の人気が絶頂期の頃、バブル以前は一部のお金持ちや、真の意味での「美食家=Gastronomme」のものであったフランス料理を、ごくフツーの人々にも浸透させた功罪について今は申しませんが、TVの影響力とともに「美食の大衆化(※)」をもたらしたのがこの「フォワグラ大根」でありましょう。
なんてったってファミレスのメニューにも取り入れられたんですから…。(パテント取っときゃよかったのにねぇ)

フォワグラというとフランス料理を象徴するような食材ですが、このころに始めてフォワグラを食べたという人も多いのではないでしょうか。
そもそも鴨(ガチョウ)のレバってだけで敬遠する人は多かったんです。そこに食べなれた大根との組み合わせを提案したのは世紀の大発明といってもよいくらいです。

時が下って現在。

フォワグラなんか不健康の代名詞のような言われようです。いま、とにかく「流行ってる」といえばあの多種の野菜を盛り込んだ皿、ネーミングは色々ですが(それこそ「歯の浮くような」ものが多い)、ブームの火付け役となったのはミッシェル・ブラスの「ガルグイユ」でしょうな。

「ドコソコのダレソレさんが作った有機野菜」「ノン・オイルで低カロリー」なんてキャッチを添えればマダムは言うに及ばず、メタボのオジサマまでめろめろですよ。
「安全」「安心」「ヘルシー」が食においては最も重要視される要素だということは衆目の一致するところでしょう。

皆がフォワグラに群がったあのころを思い起こせば隔世の感がありますが、結局のところ「流行りの料理」ってのは時代の要請に合致したものってことなんでしょう。「時代の要請」じゃあ抗えませんよね。それに乗っかるかどうかは別のことですが。

今、クラシックフレンチなんかほぼ絶滅に近い状況ですけど、フランス料理の流れを大きく変えたヌーヴェルキュイジーヌが興った直接のきっかけは労働時間の短縮を迫られたことによって調理の簡素化を図る必要があったからなんですが、それが「素材の持ち味を活かした、ナチュラルでヘルシーな料理」ということで消費者のニーズに合致したのが大きな要因でしょう。

「素材を活かす」といえば聞こえはいいんですが、それを錦の御旗にしてほとんど仕事をしない店もちらほら見かけます。「〇〇港直送鮮魚のカルパッチョ」なんかその最たるものです。堂々と「今日のお刺身サラダ」なんていうメニューを出す店さえある。ファミレスじゃありませんよ。トリコロールを掲げた(自称)正統派フレンチレストランです。技術者がいないからなのか、客ウケがいいからなのか知りませんけど、仕事をしないすし屋と同じことがフレンチでも起きています。

さて、10年後には何が流行ってますかね。ガルグイユ系の皿なんか出したら「まだそんなことやってんの?」って言われちゃうんでしょうか。

サラマンジェは流行りの料理とは無縁なはずの地方料理店ですが、それでも一時は予約が取りにくい状況がありました。まるでトレンドであるかのようにお嬢さんたちが大挙してやってきた…。ありがたいことではありますけど何となく違和感も覚えます。

けど、「またあんな時代が来ないかなぁ。」と言ってるもう一人の自分がいることも白状します。一応私も経営者なもんですから。

「地方の時代」よ、もう一度♡

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例の「フォワグラ大根」、ときどきバカにしたようなことを言う人がいるんですよねぇ。
素人のかたはいいんですよ、何を言っても。
しかし飲食関係者は言っちゃいけません。一時代を築いた人なんだし。
「じゃあ、君も日本中のレストランがコピーするような料理を創り出してごらんなさい」

※ 本来の定義はフランス革命以後、市中にレストランが多数できたことで、それまで王侯貴族のものであった「美食」が市民階層(ブルジョワ)にまで広まったこと。

関連記事:「メニューを書く」という仕事

chef

3 Responses to “「流行りの料理」について考えてみる”

  1. 煎茶 2010年2月26日 at 18:04 # 返信

    ご無沙汰しています。
    ついこの前、小樽のラ・シュミネでコースの一皿目で「フォァグラ大根」頂きました。
    その際に花形シェフとおしゃべりしていた内容が、
    「もうヌーベルの鉄人(石○)シェフのクラッシクな料理」だけど良く考えられている皿ですねぇ~。
    と言う内容でした。
     フォァグラ本体への火の通し方と、大根に煮含めるコンソメ出汁の出来や両者の口中での砕け具合等(私みたいな素人がエラソウですが)
    「料理人と言うかその店の真面目さが判る良い一皿目」だと思います。
    そうそう、名前だけ聞くと、もう新鮮味については陳腐化したイメージですが、花形シェフの料理には上からバジルの餡?が掛けられていて全体の調和はそのままに、また一味変わって(バジル餡が加わったにもかかわらず)元ネタより軽く仕上げられて最初の一皿にはピッタリでした。(因みにメインは鹿)

  2. オヤジシェフ 2010年2月27日 at 02:27 # 返信

    おや、フォワグラ大根にはもうお目にかかることはないと思っていたのに花形シェフが?
    まだそんなことやってんの? って冗談です。
    私の古い友人までご贔屓くださってありがとうございます。

  3. 竜次 2010年2月28日 at 21:29 # 返信

    初めまして。いつも楽しく拝見してます。
    表の人間ですが、シェフのように真面目に仕事してるサービスの人にはなかなか出会うことがなく、店を辞めることも多々ありました。
    去年いた所のシェフは(1つ星)金曜に銀座でお姉ちゃんと遊んでました。
    僕も40越えたのでいい加減になる必要もあるかと思いますが…
    札幌マーシュの遠藤さんとは少しいっしょに働いてました。昔はもっとガタイがよかったです。
    機会があれば伺いたいのですが休みが被ってるので難しいです。

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