旧「オヤジのフレンチ」

「レストラン評論家」に物申す

人気blogランキング

一昨日、7/25付け読売新聞夕刊にてサラマンジェが紹介されました。

「ぶらり食記」というコラムです。
これまで一回の記事で2店のレストランが紹介されてきましたが、今回同時に紹介されているのが「シェ・アズマ」さんでありました。

「シェ・アズマ」さんといえばフランス地方料理を得意とする名店で、時流に流されることなく“まっとうな”料理を貫いているように見えます。
たった1度伺った事があるだけですが、その料理は料理人から見るととても「誠実」です。
私は東シェフと知己ではありませんし、私がこんなことを言うのはおこがましいくらいの大先輩でありますが、そんな方と一緒に紹介していただいたことは、私にとって非常に名誉なことで、光栄に思うのです。

ライターさんは畑中三応子(みおこ)さんといって、長く料理書の編集にたずさわってきた方です。
これまた若造の私が言うには口はばったいものがありますが、数少ない「プロ」のライターさんであろうと思います。

いわゆる「フードライター・ジャーナリスト」を名乗る人の中には、殊にフランス料理についての知識がほとんどないと見受けられる人もたくさんいます。
というより、誤解が非常に多い。そしてご自身の無知や誤解を疑うこともしない。
プロのもの書きであるなら検証作業をすべき。それをしないのでは、まるで素人グルメブロガーの「俄かレストラン評論家」と同レベルでは?

で、そういう文章を書く方に限って、当事者の校正を要しないレストラン批評だったりするから始末が悪い。
店にとっていいことも悪いことも書くから、というのはもちろん理解しますし、それに不満を申し述べるものではありませんが、料理に使う食材や、構成とか由来とか、官能評価に属さない「事実」に関する誤解をそのまま披露してしまう。

悲しくなります。

私が良い本をご紹介しましょう。

Photo
「フランス食の事典」日仏料理協会編

Photo_2
「プロのための フランス料理の歴史」学習研究社刊

前者は網羅的にフランス料理に関する「事実」のほぼすべてに答えてくれます。
お粗末なミスはなくなるでしょう。

そして後者はフランス料理にかかわるすべての職業人必携の書。
特にレストラン評論家を自認する人にはぜひ読んでいただきたい一冊です。
内容をちょっとだけ引用します。

美食と消費者の間におかれたプロのインターフェイス役として、批評は料理人の仕事に方向性を与える、そうした重い責務を担っているのだ。

われわれ料理人の周りには様々な「他人のふんどしで相撲を取る」のが得意な人が大勢いますが、真に「批評家」と呼べる人はそんなにいませんな。

批評家の仕事がその機能をもたない「感想」を述べるだけでは、消費者の利益にもならんでしょう。

先日、このところ露出過多気味の、ある人気レストランへ行ってきました。
その店は、コンセプトにちょっとだけサラマンジェと共通するものがありまして、私は大いなる期待と興味を持って出かけたのですが、…ショックでした。
あまりのクオリティーの低さ、賄いかと思いました。料理の体を成していないんですよ。

一所懸命まじめにやってるのに、悲しいかな技量が伴わない、というのであれば私もここまで酷くは書かない。
うまいマズイはしょせん主観でしかない、といつも私は言ってますが、それ以前の問題。客をナメてる。
この店のシェフには料理人としての誠意とか矜持というものが感じられない。
かの「シェ・アズマ」とは対極にあるような店。

ま、シェフはどうでもいいとしても、若いスタッフがかわいそうですよ。
この店で働いたことが彼らのキャリアにならんのですから。

結局のところその店は、料理の完成度を求めない、話題提供だけのいわゆる「テーマレストラン」だったのです。
このままならおそらく早晩撤退でしょう。そしてまた新たなトレンド店舗を出店して話題性だけで集客するという、飲食“事業者”のよく使うビジネスモデル的レストランでした。
(それならばシェフ一人を責めるのは酷というものかもしれませんが。)

露出過多と書きましたが、ホントにこのところメディアにしょっちゅう登場します。そしてレストラン評論家の方々は皆さんその料理を大絶賛されている。

ヒモ付きですか。

消費者の利益に資するという使命は?
料理人を、そして客を育てる自負は?
文化としてのフランス料理を守る覚悟は?

それがあなたたちに求められていることなのだ、という自覚すらない?

ああ、書きました。

このテのことを書くと同業者からのウケはいいんですがね…。
今、若干ビビってます。
ライターの皆さま。報復でサラマンジェをボロクソに書くのはやめてください。

人気blogランキング

ところで「シェ・アズマ」の支店ができるそうですよ。

それが、な、な、なんと「Bouchon d’OR」ブション・ドールという店名。
リヨン料理で銀座に出店だそうでございます。
やっちゃってくれますねぇ、東シェフ…。

強力なライバル出現、というか私にとっては脅威でございます。
商売がたきですから、リンクは貼りませんよ。

chef

12 Responses to “「レストラン評論家」に物申す”

  1. hkkk 2009年7月27日 at 23:54 # 返信

    「リンク貼りません」に大爆笑[E:#xEB64]
    凄く久しぶりの連チャン書き、うれしいっす[E:happy01]。

  2. 匿名 2009年7月28日 at 17:54 # 返信

    パチパチパチ。(拍手の音です)
    さすが、オープンカウンタで真面目に毎日取り組む料理人の言葉だと思います。
    >消費者の利益に資するという使命は?
    >料理人を、そして客を育てる自負は?
    >文化としてのフランス料理を守る覚悟は?
    海老沢泰久さんが書かれた「美食礼賛」を10年程前に読みました。
    そこに、当時のリヨンの三ッ星「ラ・ピラミッド」を訪れた辻調
    理師学校の初代校長)をマダム・ポワンが歓待したくだりが有りま
    すが恐らくこれは、辻氏が、「料理を通してフランス文化そのものを勉強しに来た」
    事を察したからだという風に読み取れました。
    最近は有名税なのか「サラマンジェ」で検索してその評価を見てみると、
    中には、"一体何を勘違いしてるのか?"と言う様な評価も散見される様になってきましたが、
    「自分の意固地な物差ししか持たず物事を片側からしか見られない」様は滑稽ですら有ります。
    (まあ、偉そうに一刀両断にとかやって見たいんでしょうね。)
    料理って、生身の人間がコツコツと作るからこそ食べに行く甲斐が有り、そこに両者に
    波があってもそれは仕方ない事だとおもうんですけど。
    私はレストランに料理を食べに来ていますが結局は料理する人との感性のキャッチ
    ボールで繋がりで段々とそこの料理に対する印象は変化(サラマンジェさんの場合は
    最初の驚きからしみじみ旨いへ・・・・)していくと思います。
    余談ですが、
    因みに私は高名なYさんの本も、Tさんの批評も両方見ますが、どちらをより信用す
    るか結局はそれを見て自分でそこに行って食べてみて両者のどちらが"私の感性と似
    ているか"を数をこなして見ないと判らないと思ってます。
    でも・・・・・・
    「ヤマメと杏(あんず)のテリーヌ」は旨そうだなあ。

  3. 煎茶 2009年7月28日 at 17:55 # 返信

    すみません、上の投稿は私です。
    クリックした場所がよくなかったようで匿名投稿になっちゃいました(汗

  4. anatanoryourinoitifan 2009年7月28日 at 23:41 # 返信

    官能によらない「事実」・・・
    わかるような、わからないような。
    昔、ひまわりやトウキビを刈り込んで作った巨大迷路がはやった時期がありました。シェフはご存知ですか?私は最近それを何度も夢で見ます。

  5. oyajiシェフ 2009年7月29日 at 02:19 # 返信

    煎茶様
    長文コメントありがとうございます。
    ワタクシ、そんな風に言われているんですね?
    知りませんでした。
    さほど過激なことを言ってるつもりもないんですが…。
    料理人は料理で自分を表現すればそれでよいとも思いますが、多くの寡黙な料理人の気持ちを代弁してる、という自負もあるのです。
    けど、独りよがりかもしれません。
    どうなんでしょうか…。
    あなたのコメントに対する答えになってなくてすみません…。
    *****************************************
    anatanoryourinoitifanさま
    ご指摘いただきました箇所、表現を改めました。
    その他、誤解を避けるため一部加筆しました。
    サラマンジェ シェフ 脇坂

  6. 煎茶 2009年7月29日 at 09:17 # 返信

    連荘で失礼します。
    http://blogs.yahoo.co.jp/gourmefighter/28755964.html
    >ワタクシ、そんな風に言われているんですね?
    >知りませんでした。
    書き方が誤解を招いたようでスミマセン。
    →"一体何を勘違いしてるのか?"
    の部分はシェフで無くて、勝手に評価する人間の書いた文章の事です。
     囲みの仕方が良くなったですね。スミマセン。
    で、折角ですから、代表例として下記のリンク先を参照して見てください。
    (ネットに公開して評価している以上、リンク先の開示は問題ないと考えます。)
    http://blogs.yahoo.co.jp/gourmefighter/28755964.html
     読んで戴けば判ると思いますが、この書き込みでこのコメントです。
     味付けからBGMがない事からシェフが寡黙な事までイチイチ悪意にとっているようです。
     まあ、参照先のblogのBGMとフライパンのくだりはともかく、味付けの件は、この人の評価によればアルコールが苦手でも通ってる私は変な味覚だという事なのでしょう。(苦笑)

  7. 脇坂 2009年7月29日 at 10:27 # 返信

    大丈夫ですよ。決して誤解はしておりません。
    加筆部分はこの記事を書いたときから気になっていたのですが、つい書きそびれてしまったので。
    私にも親切に教えてくれる人がいるので件のブログの存在は存じております。
    この方は、要するに私の態度が気に入らなかったのですが、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということなんだろうと思います。
    もちろん非は私にあるのは認めますが、「お客様」であっても、あまりに礼を失した態度では店から選別される、ということが現実にあるということを知ったのではないでしょうか。まだ20代と思しきおこちゃまでしたから世間知らずはしょうがない。
    ご自身のHNに「グルメ」という語をかぶせちゃうあたりも「若いんだなぁ」って思います。
    もちろんワタクシ、常にそんな態度でいるわけではありません
    まだサラマンジェに来たことがない方がこれを読んだら引いてしまうでしょうけど、そんなことありませんよ。いたってフツーです。ご安心ください。
    それにしても「ファイター」も照れる…。

  8. 山茶花四十郎 2009年8月1日 at 06:44 # 返信

    いつも背筋を伸ばして拝読させていただいております。
    尊敬・謙虚・矜持・覚悟・自負・真摯。
    行間から溢れてくる熱い想いに感動すら覚えます。
    もちろん,お料理からも。
    今年の正月,連日お邪魔して
    料理を堪能させていただきましたが,
    半年以上経っても,舌が記憶しておりますよ。
    次にサラマンジェの料理を
    ガッツリ食べられるのはいつになることか(泣)
    なにせ遠いもんですから・・・。

  9. オヤジシェフ 2009年8月1日 at 11:18 # 返信

    山茶花四十郎さま
    ワタクシのほうこそ背筋が伸びる思いでございます。
    傲慢、不遜、という声も聞こえてきそうですが…。
    帯広のかたなんですね?遠いところからわざわざありがとうございます。
    ブログ、面白いです。

  10. はまっこ 2009年8月3日 at 21:21 # 返信

    初めて食べたその日から好きです。脇坂シェフのお料理。
    まだ3度ほどではありますが…
    機会があればいつだって、また行きたい!と、想っちゃいますもの。

  11. 2009年8月11日 at 17:43 # 返信

    『フランス料理の歴史』思わず買って読んでいますが、結構苦戦しております。
    『フランス食の辞典』は結構高いので2の足を踏んでいます。普及版なら半額ですが、どうなのかなと。
    また懲りずにお邪魔したいと思います。
    よろしくお願いします。

  12. オヤジシェフ 2009年8月11日 at 23:03 # 返信

    えらいっ!
    「フランス料理の歴史」 最初のほうはウザいので飛ばしてください。
    「フランス食の事典」普及版は中身は一緒ですが、老眼がキテる私には無理です。
    桜さんはどうですか?(失礼)
    編者のブログもどうぞ。
    http://afjg.blog94.fc2.com/

コメントを残す